【人生100年時代】下流老人が意味するもの(コラム)|シニア1165(いい老後)
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【人生100年時代】下流老人が意味するもの

鶴蒔靖夫 著『人生100年時代 いつまでも自分らしく暮らしたい 老後の住まい第3の選択「シニア向け分譲マンション」』は、2016年7月に発行された書籍です。

まだ物件数の少ない、多くの人にその実態が知られていないシニア向け分譲マンの特性を詳しく紹介し、豊かな老後を想像するヒントとなる健康寿命の延伸を推進するするための創意工夫と、その実践のあり方を知ることができます。

このページでは、同書より、それぞれの章の内容を抜粋して連載する記事コラムの形にて、皆さんに「人生100年時代」を生きる道標のひとつとして、シニア向け分譲マンションの実情を紹介していきます。

人生100年時代 いつまでも自分らしく暮らしたい 老後の住まい第3の選択「シニア向け分譲マンション」鶴蒔靖夫 著

第2回は「第1章 超高齢社会に突入した日本」より、「下流老人が意味するもの」を紹介します。

「平成28年版超高齢社会白書」によると、高齢者世帯の平均貯蓄額は2499万円であるという。しかし、その内訳を検討すると、この平均値は必ずしも現状を忠実に映し出してはいないようだ。

というのも、約35%の世帯は貯蓄が1000万円に満たず、貯蓄額が100万円未満の世帯も6.1%ある。一方、4000万円以上の貯蓄を有している世帯が約18%ある。平均値を高めているのは、こうした一部の人たちなのだ。

「下流老人」という言葉は、NPO法人で貧困老人の支援を続けている藤田孝典らによる造語だというが、そのリアルなニュアンスが、貧困老人の問題を広く社会に知らしめることとなった。

「下流老人」とは、収入が著しく低く、貯金もほとんど底をついた、孤立した高齢者のことであり、憲法に保証された健康で文化的な生活を送ることの困難な高齢者をさしているとの論を展開した『下流老人』(朝日新書)が2015年6月に上梓されると、たちまち反響を呼び、ベストセラーとなった。

藤田によれば、下流老人は決して他人事ではない。事故やケガなど想定外の事態が暮らしを直撃し、普通の人が下流に陥ってしまうケースは、珍しいことではないというのだ。

『下流老人』のなかで筆者が注目したのは、下流老人を多く生む要因のひとつに家族のあり方の変化がある、という部分である。

老後のリスクは、むかしもいまと同じように存在した。それでいて現代ほどに極端な転落をせずに暮らしていけたのは、家族や地域社会というセーフティネットが機能していたおかげであったという。

少子高齢化と核家族の広まりは、ひとつ屋根の下で三世代が暮らすという旧来の家族のあり方を過去のものにした。30年前は、約7割の高齢者が子どもと一緒に暮らしていて、高齢者夫婦のみの世帯は約2割、高齢者の一人暮らしは1割に満たないという少なさであった。ところが2014年には、子どもと同居の世帯は約4割に減少し、一方で夫婦のみの世帯は約4割に、一人暮らしも2割弱に増えるという、ずいぶんな変容を見せている。

この一人暮らしの高齢者のうち、半数近くが年間収入150万円未満という調査結果も出ている。夫婦のみの世帯でも、7世帯のうち1世帯は年間収入が200万円未満だという。

むかしは、それほどの低収入であっても、現役世代の子や孫が不足分を補うことで、それほど不自由のない暮らしをすることが可能だった。だが、いまは子ども世代も厳しい状況にあり、親の面倒を見る余力はなかなか持ちえない。ゆえに、家族による扶養を前提にした高齢者ケアを頼りにすることは難しく、その意味で、社会保障の充実と、一層の高齢者対策が、喫緊の課題となっているのである。

何かあっても、家族にも地域にも頼れず、「自己責任」で生きていかなければならないのが、現在の高齢者のおかれた状況と言えようか。

生活保護を受ける高齢者も年々増加し、いまでは約80万の高齢者世帯が受給しているという。最後のセーフティネットである生活保護をより柔軟に利用できるようにすることも、真剣に取り組まなければならない課題であると、藤田は主張する。

現在、推定600万~700万人はいると言われている下流老人を、単なる落ちこぼれととらえては、老後への不安は増大するばかりだろう。現在社会に警鐘を鳴らす存在として考える視点が、いま求められているのではないだろうか。

著者紹介

鶴蒔靖夫(つるまき やすお)

日本の実業家、ラジオパーソナリティ。
樺太(現サハリン州)生まれ、北海学園大学経済学部中退。フリーライターとして独立。大宅壮一に師事。昭和40年7月株式会社IN通信社(アイエヌつうしんしゃ)を創立して代表に就任。雑誌「人物評論」発行、編集主幹を経て、現在、評論家、ラジオパーソナリティとして活動。

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