【人生100年時代】シニア向け分譲マンションは終の棲家になるだろうか
鶴蒔靖夫 著『人生100年時代 いつまでも自分らしく暮らしたい 老後の住まい第3の選択「シニア向け分譲マンション」』は、2016年7月に発行された書籍です。
多くの高齢者が身体的衰えや家族やライフスタイルなど、生活環境の変化にマッチしていない住宅に住み続けている現状を知ることができます。
このページでは、同書より、それぞれの章の内容を抜粋して連載する記事コラムの形にて、皆さんに「人生100年時代」を生きる道標のひとつとして、シニア向け分譲マンションの実情を紹介していきます。
第8回は「第4章 シニア向け分譲マンションの特殊性」より、
「シニア向け分譲マンションは終の棲家になるだろうか」を紹介します。
インターネット上の書き込みなどを見ていると、「シニア向け分譲マンションは、終の棲家とはなりえない」など、断定的に述べているものもある。
だが、「ダイヤモンドライフ森の里」では、これまでに看取りを行ったケースもあるという。いずれも、ご夫婦で暮らしていて、亡くなられたのはご主人だが、病院には行きたくないとのご希望が強く、夫人もご主人の意思を尊重して、常勤の看護師や訪問介護、訪問医療などを利用しながら、自宅マンションで最期を迎えられたそうだ。
「もし自分ひとりだけなら右往左往して、けっきょく病院に入れてしまったかもしれません。何かあればすぐに駆けつけてくれる看護師さんがそばにいることは、本当に心強かったです」と、夫人はのちに語ったそうだ。
「ご子息にも、たいへん感謝されました。私も、とてもよかったと思います」と、ダイヤモンド地所 代表取締役の外所行則は言う。
「ダイヤモンドライフ森の里」では、55歳以上で、自分で身のまわりのことができるかたというのが入居の条件だが、当然のことながら、年齢的に言っても、健康にまったく不安がないという居住者はほとんどいない。高血圧や心臓病、糖尿病など、数え上げればきりがないが、なかには、一見、健康そうに見受けられる方でも、重篤な病気を患っており、日々病気と闘いながら生活をしている居住者もいる。そのため、常勤看護師の仕事は、本来は健康管理室を訪れる居住者への健康相談がメインではあるが、緊急時には、居住者のもとまで駆けつけ、緊急対応を迫られるケースも、少なからず発生している。
最期を自宅マンションで迎えたいとの希望があったときに、どう応えるか。それは、マニュアル化して考えることのできない問題である。本人の希望や家族の状況など、一人ひとりの違いを考慮し、当人の気持ちを汲みとりながら携わっていくしかない。
基本的には本人の希望を叶えたいが、すべてを受け入れられるわけでもない。看取る人がない一人暮らしの場合には、スタッフがずっと付き添うことは不可能なので、やはり病院へ行くことになる。
難しい問題ではあるが、その場その場でできることを精一杯という方法しかないだろう。それは自宅にいても施設にいても同じことである。
看取りに関しては、入居時の契約書に書かれているわけではない。しかし自宅で最期という願いがあれば、それを叶えるために最善の努力をするひとがいるところを「終の棲家」と思ってよいのではないだろうか。少なくとも私はそう考える。
著者紹介
鶴蒔靖夫(つるまき やすお)
日本の実業家、ラジオパーソナリティ。
樺太(現サハリン州)生まれ、北海学園大学経済学部中退。フリーライターとして独立。大宅壮一に師事。昭和40年7月株式会社IN通信社(アイエヌつうしんしゃ)を創立して代表に就任。雑誌「人物評論」発行、編集主幹を経て、現在、評論家、ラジオパーソナリティとして活動。
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